コラムNo.1 「観光地域経営フォーラム」への期待(桝井喜孝)
コラムNo.1 観光地域経営フォーラム」への期待
〜シンク・タンクからマネージメント・サポーターへ
ミュージアム工学研究所所長 桝井 喜孝(アドバイザリーボードメンバー)
■ソフトとシステムの硬直化
今、時代はあらゆる面で「変革の時」を迎えている。昨今の金融危機や雇用形態、グローバル・スタンダードの見直しといった時流は、単なる経済問題とだけ捉えてはその本質を見失う。自らの働き方、社会と自分との関係性、自然と人間とのあり方と言った、もっと本質的な事が問われているように感じる。西洋近代の考え方がここに来て我が国の文化のバランスを崩し、社会システムそのものが私たちの社会や暮らしぶりを壊し始めている。つまり今問われているのは、私たちの暮らしぶりであり、文化や精神の問題として捉えるべきではないか。
この事は、観光振興についても同じである。経済的な価値を豊かさの評価軸として捉えた地域振興や観光振興は、ものの豊かさや価格という尺度から比較され、「なるべく安く大量に消費する事が成果を生む仕組みや事業を作る」事を目標として組み立てられているように思う。国内旅行をするより、海外旅行の方がずっと安価な場合も多く見受けられ、グローバルな比較検討の中にさらされているのが、今の我が国の観光事業であろう。
以前「地域資源の統合活性化」という視点から、ある自治体の活性化事業構想(私案)をまとめた事があった。そこは高齢化率の高い中山間地域で、これまでの概念でいう観光資源としては、山間部の自然とよくある箱モノが2カ所、それに奥まった所にある温泉が2カ所といった地域である。そこで、点在する観光資源を連携させつつ、「ミュージアム」という概念を使い、地域住民を学芸員に見立て、地域の暮らしぶりを体験・学習・交流してもらいながら地域の文化(暮らしぶり)を味わう“賞味型”の観光事業を構想した。
また3年程前から取り組み始めているのが、長崎県五島市の地域活性化である。ここでも「ミュージアム」という概念を使っている。福江島をはじめとした五島市内に残るキリスト教遺産や隠れキリシタン達が今日まで続けている暮らしぶり、農・漁業といった地域の文化を味わう観光事業であり、地域活性化事業である。こちらでは民間組織が事業主体となり、その拠点づくりとして市から半泊村の廃校を借り受け、里山とその前に広がる海、農・漁業等をまとめた「田園ミュージアム」をつくる活動を始めている。言ってみれば、日本文化の原型ともいえる「農的暮らし