コラムNO.8 「自転車」から考える観光地域経営(小林 成基)コラムNO.8 「自転車」から考える観光地域経営
小林 成基(こばやし しげき)
NPO自転車活用推進研究会事務局長
NPO法人自転車活用推進研究会では、自転車に着目したまちづくり・政策づくりを進めている。自転車のスピードでまちを見直し、「自転車」というツールを通じて考えていく中から、大切なことがたくさん見えてくる。観光の本質にかかわる交通についての古い発想を脱却し、新しい哲学を持つことが観光地域経営実現の上でも必要だ。
「旅チャリ」の取り組み
近年急速に広がりを見せている「旅チャリ」。観光地での自転車有料レンタルは珍しくないが、旅チャリは従来のいわゆるレンタサイクルとはまったくコンセプトが異なる事業だ。
まず自転車のタイプ自体が大問題だ。レンタサイクルでは、家庭用自転車を無自覚に揃えているところが多い。しかし旅は本来非日常の体験を楽しむもの。観光地で乗る自転車がふだん買い物で使う“ママチャリ”では、旅の魅力も気分も台無しだ。旅チャリで使うのは、海外の素敵なデザインの電動アシスト自転車。観光地の雰囲気ともあいまって「かっこいい」「乗りやすい」と利用者の評判は上々だ。魅力に目覚めた多くの客が自宅で購入し、自転車メーカーにもメリットが生まれている。
既存のレンタサイクルでしばしば見かけるのが、ギアやチェーンが露出した「外装型変速機」タイプの自転車。これは足元が汚れやすい。お客様のせっかくのよそ行きの服を油で汚してしまうのは、おもてなしの点でいかがなものか。観光客へのサービスである以上、まずもってふさわしい「演出」や「心遣い」があってしかるべきだろう。しかしそうした基本的な旅人(顧客)起点の発想ができていない観光地が、実際少なくない。
自転車でまちの“息づかい”に触れる
京都は1000年を超す歴史と文化が濃密に堆積する、日本最大の観光都市だ。近年では金閣寺・清水寺といった定番スポットよりも、錦市場のおばんざいや町家・路地めぐりのように、人々の暮らしの息づかいに触れる“生活文化観光”の人気が高い。このような街を観光する際に望ましいのは、どのような移動手段だろうか?
京都は観光タクシーが多く便利だが、街の息づかいや細部の魅力に触れるには、車のスピードでは困難だ。その意味では徒歩が一番ともいえる。だが一方限られた時間でいろいろ見たい観光客にとっては、京都は歩いてまわるには大きすぎる。「京都サイクリングツアープロジェクト」では、オリジナルのレンタル自転車システムとともにサイクリングツアープログラムを整備したところ、顧客ニーズにマッチして大好評となった。
成功要因は、「ガイド」と組み合わせたこと。まちの歴史や文化を読み取るにはそれなりの知識が必要になるが、地元に住むガイドがいっしょに自転車でまわってくれるので、旅人が気づかない多くの魅力にアクセスでき、満足度が高まった。「まちの魅力の発掘・伝達」という面でも、自転車は有力なツールといえる。
「規制の壁」を乗り越える
各地でマラソン大会がブームだが、自転車でも「ロングライド」とよばれるスポーツツーリズムが人気だ。その名のとおり長距離のコースで、タイムを競わず完走を目指すもの。例えば島を一周する「佐渡ロングライド」ではほぼ210㌔にもなり、よいコースはまちおこしの面からも十分な魅力を持っている。
各地の大会はいつもパンクするほどの人気だが、大会規模の拡大ができず、参加希望者を断っている。せっかくの貴重な観光需要を切捨てているのは、交通管理者による規制が強すぎるからだ。自転車にやさしいまちは交通の安全性も高いというのは世界の常識だが、常に原則禁止・規制のスタンスから、こうしたイベントは制限される。
今回フォーラムのまとめた「地域ビジネスモデル構築ガイドライン」でもオープン・カフェタイプの拠点づくり提唱しているが、道路を使う取り組みであれば、こうした“規制の壁”をいかに突破するかがひとつのカギになるだろう。各地の事例が、どんな壁をどのように突破してきたかという情報があれば、これから始める地域にとっても効果的だ。
「レンタカーを使えないまち」東京
いま海外のガイドブックのなかには、「東京でレンタ