イオンとパルコ ― 土居 弘元教授

 「パルコ、社長退任受けいれ」という見出しが日経をはじめ各新聞朝刊の経済欄に載ったのは4月20日であった。専門店ビル大手のパルコが筆頭株主の森トラスト、第2位のイオンによる経営陣の刷新要求を受け入れ、パルコ社長が退任するという人事案を固めたのである。

 パルコは専門店ビル大手、主として都心部でファッションビルを展開している。イオンはご存知のように郊外型のモールを展開している。最近はこの郊外型のモールに成長の勢いがなくなってきている。一方、都心のファッションビルとしてパルコの集客力は抜群である。その業態に目をつけたイオンはパルコの株式12.3%を取得し、パルコに対して業務提携の申し出をした。パルコ内部には、イオンの提携案の内容に期待する空気もあったようである。イオンも友好的提携を強調し、パルコが筆頭株主である森トラストとの対立を打開する契機になる可能性も考えられた。しかしイオンは取締役派遣やイオンの専門店ビルのパルコへの移管などを打診し始める。それに対してパルコが敬遠の姿勢を見せ始めると、森トラストと共同歩調をとり始める。そこで求めたものは社長の退任、会長兼最高経営責任者を含めイオンと森トラストから計5人の役員派遣を、というものであった。筆頭株主と第2位の株主の株式は合わせて45%強。これをひっくり返すには株主総会での委任状争奪戦に発展することが予想される。それは相互の評価を高めるものではない、ということで社長退任を受け入れる。また、イオンが要求する国内外の共同事業などの業務提携は新経営陣の下で協議することになった。

 この提携をめぐる抗争はイオンが勝利したように見えるが、パルコも完全に屈したわけではない。イオンと共闘している森トラストやパルコに肩入れしている日本政策投資銀行の思惑も交錯する。諸々のステークホールダーズがどのように考えて前進することを望んでいるのか。それが描かれなければ今後はいろいろなことが想定される。

 森トラストはパルコの株式を過半数握り、株式支配をすることが主眼であろう。なぜならパルコは都市部のファッションビル経営をしているのであり、テナントはパルコというブランドに魅かれて出店するのであるから。そして、イオンにもこの都市部ファッションビル業態こそ自社にはない、しかし手に入れたいものである、と推測される。

 ここで、経営学で議論される「会社は誰のものか」ということが思い出される。資本主義社会では最後は資本が物を言う。だから、株式を過半数握れば全てはその資本所有者のもの、ということになる。しかし、営々と努力して築き上げてきた経営の努力、その根幹となる経営戦略に基づく企業ブランド。それを売りたくもないのにお金の力で買い取られてしまう資本主義とはいったい何なのであろうか。そのようなことを考えるとき、思い出されてならないのは栗本祐一先生(名古屋商科大学創立者)の語られた「お金を作るのは銅の仕事、物を作るのは銀の仕事、人を作るのは金の仕事」という言葉である。

 これから後の論述は政策科学としての「交渉学」の視点から少し探ってみるものである。

 イオンは森トラストと経営戦略上で一致することは難しいのではないか、と推測する。
そうすると、イオンは敵対的買収を進めてパルコを膝下に置く方向をとってくることが考えられる。それに対してパルコはどのような対応をすればよいのであろうか。当然、独力で進むことで成果を考えることは難しい。やらなければならないことは、いかにステークホールダーとの連合を組んで対応していくかである。

 そこで、パルコは自分のパーティー(連合を組む仲間をこう呼ぶ)に対して目的の共有化を図り結束すること、その結束を基にホワイトナイトを呼び込むこと、そして最大の努力として森トラストをイオンから引き離して自己の側にひきつける努力をし、連合体の組み換えと強化を図ること、である。シーベニウス教授が提唱する3Dの交渉という概念の再セッティングを考えることである。それをやらなくてはイオンの考える方向に引きずられる公算は大である。

経済学部経営学科
2011/05/13 09:46



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