ロシアと周辺国への更なる普及のために(30号,2004.12.18発行)6カ月の滞在体験からの考察
ロシアのサンクト・ペテルブルグに半年間住み込んで学校での課外授業を中心にさまざまな将棋活動を行って来ましたが、その中から現状を踏まえてどんなことが必要か、ISPSとして何が出来るか、私なりに感じた事を簡単にまとめてみたいと思います。なお、フィンランド,ウクライナなど近隣諸国にも足を伸ばしてきましたので、それについても言及させて頂きます。(鈴木良尚)
【将棋普及の3つの基本】
海外へ将棋を普及させる場合、3つの基本が重要であることは既に知られていることです。第一が盤駒の道具、第二がその国の言葉で書かれた教科書、そして第三が指導者です。最近はインターネットが普及したことによりこの三つをまとめて個人的にはコツコツと一人だけで研究上達することが出来るようにはなりましたが、人と人との顔を合わせた交流が無いと幅広く大勢に普及する基盤は作れません。このことは後に触れる事にしてまず国別に考えてみましょう。
【ロシア - 有段者の交流を】
先ず盤駒の普及は将棋人口と比べてまだ少なく、「薔薇の学校」の場合新しく始める生徒にはボール紙を使って自分で盤駒を作らせました。そして、少し馴れて来た時に私の持参したプラスチック製盤駒を教室で使わせて実際の感触を味わってもらいました。 すると父兄から駒を買いたいという要望も現れて安い百円駒を150ルーブル(*1)で分けてあげました。
モスクワで将棋の普及に熱心なノソフスキーさんは同様の駒を中国から大量に輸入して260ルーブル(*2)で今年から商業販売を始めています。数量から見るとロシア語圏では駒の市販が開始された事により基本の一つがかなり満たされた事になりますが、生活レベルから見て高価です。なお、これまでに将棋連盟やISPSから無料で提供されたプラスチックの盤駒は勿論、街の道場などで有効に使用されています。
(*1)約540円。日本からの送料が高い。無料で配布すると際限が無い。(*2)約940円。
次にロシア語で書かれた教科書ですが、一番早いキスリュウクさん執筆の将棋紹介の本、ISPSから翻訳を依頼した「羽生の奥義」の本、それにノソフスキーさんの書いた初心者用の本など少しはありましたが、本年ノソフスキーさんが出版した840ページの大冊は、ロシア語版としてこれ一冊あれば当分バイブルとして使える代物で、200ルーブルという専門書にしては買える値段でもあり、基本の第二は当分解決されたと考えて良いでしょう。その他に、サンクト・ペテルブルグで3手詰めの詰将棋集も編纂されており、私もこれを買い上げて熱心な人たちに無償で配布しました。
最後に指導者ですが、サンクト・ペテルブルグでは街のクラブのメンバーが初心者指導を行っています。しかし、少し強くなった人はインターネットで対局する以外に道はなく、実際に将棋24で4千局対局したというつわものがいます。従って、日本から有段者が交流に訪れるとたいへん喜ばれます。いわゆる日本の商業的道場が全くありませんから実戦不足は明白です。
【ウクライナ - 盤駒の供給が課題】
同じロシア語圏でロシアとの交流もあり事情は全く同様です。キエフのクラブで将棋を教えているアリストフさんからは、プラスチック駒14箱を日本で買って送って欲しいとお金を預かって来ました。ISPSとしても要請に応えて盤駒の輸出営業をしたらどうでしょうか。また、ある親子からはお金を預かり、磁石式の小型セットが欲しいと言われ、たまたまキエフに出張する当会会員の方に持参して頂きました。
【フィンランド - 盤は自給可能】
この国は森林資源が豊富にあり、しかも芸術的家具製造などを得意としているお国柄で、将棋盤は自家製造するので不要、駒の方だけあれば十分と言われました。ここ1年以内に国内将棋連盟を立ち上げるについては、とりあえず大量の安い駒が必要で、それらを一般会員に買ってもらうようにする由。近々日本に行く留学生を通じて費用の精算処理をすることにして駒を送る予定です。ハイレベル競技用には一部プラスチック駒も送ります。
問題はフィンランド語の教科書が無いことですが、トローネンさんが初心者用に自分で作った将棋の指し方のパンフレットはあります。ただ、この国では英語の普及率が高いので英語でインターネットを使う手はあるでしょう。指導者も全く居ませんので交流が大事になります。
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