着実に進むフランスの将棋普及(49号、2010年2月20日発行)先進国は発展途上国や中進国に比べて将棋を広めていくのがなんとなく難しいと思われている節があるようですが、フランスは例外ということになってしまうのでしょうか。他の先進国もフランスと同様に将棋を広めていける余地があるのではないか、という問題意識をもって、フランスでなぜ確実に将棋が広まりつつあ るのか考察をしてみたいと思います。(寺尾学)
最初に私の結論から申し上げると、フランスではフランス将棋協会を中心に次の5つの要素がかなりの程度満たされているので確実な将棋の普及が進んできていると考えています。
(1)現地の言語による将棋入門書、将棋書物の出版
(2) 将棋を知らない人に対する将棋の紹介活動が組織的に行われていること
(3) 普及用の盤駒の供給体制を整えていること
(4) 現地の言語によるユーザー参加型のネット上のオープンな将棋コミュニティの存在
(5) トーナメントや将棋会が定期的に各地で行われていること
それぞれについて、もう少し細かくみてみましょう。
(1) 現地の言語による将棋入門書、将棋書物の出版
フランス将棋協会は2007年に四間飛車についての本をフランス語で出版していましたが、昨年の11月には愛好家数人が各章を担当して全くの初心者向けの将棋の入門書をゲームの書物を多く刊行している出版社から発行しました。
英語では、ジョン・フェアベアンさんの著書や訳書、トニー・ホースキングさんの著書や訳書など、それなりの数の棋書が存在しますが、フランスの人にとって、英語は日本語ほど縁遠い言語ではないにせよ所詮は外国語の書物です。やはり、母国語による棋書、とりわけ、全く将棋が初めてという方向けの入門書については母国語のものがあるのとないのとでは大きな違いです。それは、日本でチェスを覚えようと思い立ったとき、日本語の入門書が発行されている場合と、英語でしか入門書が手に入らない場合を想像してみれば、容易に納得できることではないかと思います。
(2) 将棋を知らない人に対する将棋の紹介活動が組織的に行われていること
先進国で将棋があまり広がっていっていない国にありがちな現象は、複数の将棋クラブが国内にあって、定期的に将棋会やトーナメントがそれぞれで行われているものの、それ以外の活動がなされていないので新しく将棋に触れる人、興味を持つ人がなかなか増えない、という現象です。フランスでは、日本のマンガ・アニメを中心に日本文化に興味がある人が10万人以上集まる7月のパリの「ジャパン・エキスポ」や、南仏のカンヌで毎年冬休みの時期に行われ、国内各地のゲーム好きがやはり10万人以上訪れる「ゲームの祭典」の場で将棋のブースが出され、フランス人の将棋愛好家によって、将棋の展示、入門指導が毎年行われ、新しく将棋に興味を持つ仲間が増えています。2009年は、これら二大将棋紹介イベントに加えて、11月にドイツの国境に近いナンシーのアニメイベントで将棋のブースを出展、12月にはボルドーのボードゲームクラブで将棋の紹介およびカーレースで有名なル・マンで行われたチェストーナメントの場に将棋のスタンドを設けて、これまで将棋を全く知らなかったか、あるいは名前は聞いたことがあってもよく知らなかった人を対象に将棋を紹介する活動を行っています。これらの活動は(1)で述べたようにフランス語の将棋入門書が発行されたので今年からはさらに効果が出るものと期待されますし、また、将棋が紹介される機会自体ももっと増えるのではないかと思われます。
(3) 普及用の盤駒の供給体制を整えていること
イーベイという誰でも個人で好きなものを国内のみならず海外へも販売できるサイトがあります。そこで、百円ショップで売られている100円の駒が海外向けにいくらで売られてい
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