薄っぺらな知識を振りかざして、反発する人間25年も前のことですが、当時まだ助手を務めていた治療院に、新患が来ました。
あっちが痛いとか、こっちが苦しいとか大騒ぎしていましたが、どこの病院や治療院に行っても
治らないと、不平不満を並べ立てるのです。
じゃー、当治療院の治療法を説明しますと言っても、説明などいらないというのです。
私は、もと看護婦だったから、人の体のことは何でも知っていますと言うのです。
私 「そんなに人の体に詳しいなら、自分で治したらどうですか」
女 「自分では治せるわけがないでしょ」
私 「今までどこへ行っても治らなかったんでしょ」
女 「だからここへ来たんです」
私 「あなたが知っている、今まで受けた治療法では治らなかったんでしょ」
女 「そうです」
私 「ここは、今まで受けた治療法とは違うことをやるんですから、ちゃんと説明を聞いてください」
女 「看護婦だから、人の体のことは長年見てきて、なんでも知ってるんです」
私 「だから、なんでも知ってても、その方法じゃ治らなかったんでしょ」
女 「そうですよ、それで紹介されたから来たんです」
私 「神様のように一発で治せるというものじゃないんですから、本当に根本から原因を
治すというのはどういうことか、良く納得してもらいたいんです」
女 「いろいろと本を読んで、かなり良く知ってるんですけど」
私 「何の本ですか」
女 「看護学とか、衛生とか、解剖学とかです」
私 「それは、医療を行う人が基本の知識を学ぶためなのでね、それを読んだからって、
人を治せるものでもないし、新しい治療法も、別の考え方もあるわけですから」
女 「私の経験や知識では、役に立たないというんですか」
私 「そんなことは言ってませんよ。でも、今まで話した感じでは、むしろ経験や知識が邪魔をして、
かえって新しい治療法を素直に受け入れないようになっていますね」
女 「自分では、すなおな性格だと思ってるんですけど」
私 「ここで思ったような満足感を得られないと、またよその治療院や病院に行って、
ここの悪口や不満を言いだすんじゃないですか。
たぶん、今までかかった治療院や病院の先生たちも、同じように感じたと思いますよ」
女 「今までかかったところでは、説明なんか何にもなかったんですよ」
私 「説明できなかったのか、したくてもできないような雰囲気だったのか分かりませんけどね。
ここでは、ちゃんと説明できるから説明すると言ってるんです。そのことに何か不満があるのですか」
女 「不満はないですけど、大体のことは分かってるんですから、説明は受けなくても」
私 「しかし、あきれてしまいますよ。まるで治りたくないかの様な態度で」
当時の院長 「菅原君、その人には、もう帰ってもらいなさい。他の患者さんに迷惑だからね」
なにがどう不満なのか、すねているのか、こういうハチャメチャな人もたまに来るのです。
浅はかに知識を振りかざして、世界中のすべての事象に精通しているかのごとき態度をして、
結局何も自分のためにならない結果に終わるのです。
自分の主張が筋の通ったものか、世の中に通用するものか、もういちど考えてみる必要のある人間、
モンスターペイシャントが結構増えています。
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